メガネの試着

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そもそもメガネを試着するといういいかたが正しいのかは知らないが、先日、これまで使っていたメガネの柄のプラスチック部が折れていることを発見したので、中に金属の芯が入っているからたちまちに問題になるレベルではないのだが、鼻がかかるところが謎の白化(たぶんこれはプラスチックとおっさん汁との化学反応でできたジアリルオッサンカーボネートとでもいうのであろう)をしていることもあわせて発見してしまったので、今年の目標をシュッとしたサラリーマンになることと定め、極力毎日髭を剃って、鼻毛なんかもことあるごとに鏡でチェックしては抜きチェックしては抜き、抜けずに諦め、穴のあきそうな靴下なんかはあきそうなだけでためらわずに捨てている僕は、もうこのメガネにとっては荷が重いのではないかとメガネのことを気遣って、ついに新しいメガネに買い換えることを決意した。

 

いつもメガネ屋に行くと思うのだが、いわゆる普通のメガネというのがあまりない。僕は割とすっきりしているデザインのものが好きなので、メガネの柄に複雑な模様とか、変な色とかが付いているものは絶対に選ばないのだが、なぜか、メガネ屋にあるメガネはそういう変なメガネがおおい。確かに、メガネなんかは、レンズが2つあって、フレームがあるだけのシンプルなものなので、そこで個性を発揮するのが仕事であるメガネフレームデザイナーなんかは、柄の形状の複雑さを作り出して、この曲線がどうの、だとか、ここのワンポイントのさし色が若々しくて新鮮な印象を与えることができるのだの、デザインを言葉にかえることのできるような狙ったデザインを作り出しては、営業サイドの打ち合わせで得意げに話して、営業サイドなんかもこれまでごまんとメガネを見てきているもんだから、いいね〜、そのコンセプト、新鮮だね〜、いけるね〜とか言っちゃって、デザイナーなんかも、そうでしょ〜、あたらしいでしょ〜なんつって、製品化されて、ショーウインドウにならんで、僕なんかが見て、柄の部分が気にいらんとかなるわけですよ。全国のメガネデザイナーの皆さん、その辺自制願います。

 

ほんで、メガネ屋にいってまたまた気づいてしまったのですが、メガネの試着をする時って、もちろん、僕は目が悪いので、メガネをかけているわけで、そのメガネを外さないと試着できないわけで、ほんで、もちろん、試着用のメガネには度入りのレンズなんかは付いていないわけで、そうすると、メガネを試着すると、もちろん、左右ともに視力0.1に満たない僕なんかは、試着した僕の顔の印象を確かめるためには鏡に相当近づかないといけないわけで。

 

メガネって難しいもんで(メガネをかけている人はよくわかると思いますが)、単品でショーウインドウにならんでいる時は、おっ、これかなりいいかも〜なんて思っても、かけたら、う〜んとなることが多いわけです。むしろ、そっちの方が断然多くて、いっても、調子のいい時のマッサーロくらいの決定率しかないわけで、実際に顔につけてみて、全体の印象を確認するというプロセスがこの先のメガネ人生を左右するほど重要なわけです。メガネが似合っていれば、明日のプレゼンもうまくいくかもしれないし、道行く富豪に、君、いいメガネしてるねなんつって、拾ってもらえたりもするかもしれないわけです。

 

そういった意味で、目が悪い人が試着するのに、『試着用のメガネにかけかえると顔全体の印象を確認するために鏡から離れると見えなくなる』問題は、可及的速やかに解決するべき問題であり、メガネ業界全体の責任であるとみています。せめて、デジカメをさりげなく置いとくとか、タブレットをさりげなく置いとくとかしておくと、そのメガネ屋の株はまちがいなく、この店はよくわかっておるなと、よくわかったときの海原雄山並みに急上昇し、それを僕に教えてくれれば、迷惑だといわれようが、1週間くらい連続でそのメガネ屋のどこが良いのかについての詳細記事をかいてもいいくらいだと思っています。

 

なにはともあれ、妻に、こっちとこっちどっちがいいと100回くらいしつこく聞き倒して割とよく似合うメガネを買うことができました。ジクロロオッサントリエチレンが極力精製されないように、気がついた時にはふいたりしてみようと思った時に、柄に近い部分に、ほんのすこしだけワンポイントの模様が付いているのに気がついて、35歳の春、すこし落ち込んだりもするけれど私は元気です。